食に対する安心・安全が当たり前に求められる今日において、企業が食を提供することに対する責任がこれまで以上に大きくなってきています。中でも、日々大量の食を生産している食品工場を持つ企業は、ほんの小さな欠陥が大損害へと発展する可能性があるため、様々なリスクを想定し、対策を講じておかなければなりません。
今回は、食品工場で起こりうる異物混入とその対策について詳しく解説していきます。
食品工場が直面する異物混入リスク
食品工場で最も気をつけておきたいのが異物混入のリスク。まず最初に、どのようなケースで異物混入が発生するかを見ていきましょう。
毛髪類、装着物
最も可能性が高いのが毛髪類。その他、コンタクトレンズ、つけ爪、つけまつげ、衣類なども注意が必要です。その他、従業員の咳やくしゃみ、唾液などから菌やウイルスが付着するというリスクも想定できます。人的要因による異物はルールを徹底すれば充分防ぎようがあるものなので、しっかり対策をとるようにしましょう。
対策
徹底した身だしなみ管理と作業服の準備を行うことで異物混入リスクを回避できます。
- コンタクトレンズやつけまつげなどの着用を禁止する
- 髪の毛が出ないように衛生キャップをしっかりかぶる
- 衛生マクスで咳やくしゃみの飛散を防止する
- 入室前に粘着ローラーで衣類のゴミを取る
- 手洗い、うがいで殺菌・消毒する
害虫
ハエ、蚊、ゴキブリ、クモ、またネズミの毛やフンなど。これらは自然発生的な要素も強いため防ぎようがないかとも思えるのですが、しっかりと対策をとっていれば最小限までリスクを小さくすることが可能です。
対策
施設の衛生管理・清潔維持および、害虫の侵入防止対策が有効です。
- 空調設備、換気口、通風孔など害虫の侵入口に防虫フィルターを取り付ける
- 段ボールを持ち込まない(害虫が寄りやすいため)
- 生ゴミなどを放置しない
- ゴミ箱は密閉度が高いものを設置する
- ドアの開け閉め、ゴミ箱の開け閉めを素早く行う
- 害虫忌避剤を使用する(食品工場での使用上問題ないか注意が必要)
- 定期的に専門業者に害虫駆除(点検)を依頼する
破片、切れ端
工場機械の金属片、包丁など調理器具の破片、パッケージトレイやフィルムなど包装材料の切れ端など。普段当たり前に使用しているものでも混入の対象になりかねないため注意が必要です。
対策
これらの対策は、日頃からの点検と、オペレーションの定期的な見直しが重要です。
- 機械の不備、故障、老朽化など、日々の点検とメーカーによる定期点検を必ず行う
- 調理器具類の点検項目をリスト化し、毎日点検を実施する
- 包装材料やオペレーションに問題ないか定期的にチェックを行う
菌・ウイルス(食中毒)
O-157、ノロウイルスなど、食中毒に関するニュースは度々世間を騒がします。それだけ人々の関心が高く、命にも関わることなので特に気をつけなければなりません。
対策
これらが発生する主な原因はずさんな食品衛生管理体制です。『食品衛生法』に基づきしっかりとした管理を行うようにしましょう。
- 食品の使用期限の遵守
- 施設・設備内の徹底した温度・湿度管理
- 調理器具・機械などの消毒・除菌の徹底
- 従業員の体調管理(体調不良者の勤務を原則禁止とする等)
人為的な異物混入
意図的に異物を混入するケースもあれば、一度床に落ちた食品を従業員が黙ってそのまま使用するケースなど、人が起こす事件・事故のリスクも考えておかなければなりません。
対策
部外者を侵入させないことと、内部での犯行を抑止すること、大きく分けてこの2つが対策となります。
- 受付での入館チェック
- 入館証の運用
- 入館システムの導入(入館証等でロックを解除し入館するシステムなど)
- 防犯カメラ(監視カメラ)の導入
異物混入発生後の対応
まずは上記の通り、異物混入を起こさないことが第一です。次に大切なことは、発生後(発覚後)の対応です。最近ではSNSの普及もあり、異物混入が発生してしまうと一瞬で全国に知れ渡ってしまいます。そこでの対応を誤ってしまえば、企業としての信用・信頼を損ない、商品回収等による実質的な損失以上のダメージを負ってしまいかねません。
初動対応
まずは言うまでもなく異物混入で被害に遭われた方への謝罪です。次に、二次被害を防ぐためにいち早く世間に公表し、場合によっては商品の回収も必要となるでしょう。そして、再発防止のために原因の追求および検証を行い、防止策を検討・実施します。いずれもスピードが命です。対応が遅れると致命的になりますが、逆に対応が早ければ世間の風当たりも弱まり、むしろ好印象を与えることにもつながります。
いち早い検証に高性能監視カメラ
人為的な悪意ある異物混入に防犯カメラが有効と述べましたが、防犯だけでなく、発生後の検証にもカメラは活躍します。工場の様子をカメラで録画しておけば、何がどういった経緯で混入してしまったのかを確認することが可能です。異物混入があった商品の詳細(いつ、どのラインで製造されたものか)を確認し、該当するカメラ・期間で絞って映像を確認すれば、より早く検証することもできます。
フードディフェンスに適した監視カメラとは
カメラを設置しても、しっかり原因検証ができなければ意味がありません。作業者の手元、食品の細かい部分までしっかり確認できる解像度(画質)のカメラを、適切な位置に設置するようにしましょう。しかし、死角をなくすように設置するとなればどうしても台数がかさみ、コストも膨れてしまいます。そこで最近注目されているのが360度監視できる『全方位カメラ』です。これなら複数台設置が必要なところを1台でまかなうことができ、その上、高画質×ズーム機能で見たい場所をより詳細に確認することができます。
異物混入対策にかかるコストは、金銭的にも時間的にも小さくなく、対策は簡単なものではありません。しかし、実際に異物混入が発生してしまった際にかかるコストに比べれば小さいものです。異物混入対策は事が起こってしまってからでは遅く、食を取り扱う企業の責任として、事前にしっかり対策を講じておくことが大切なのです。